ある島の物語 narrative island 2003 8 19

 私が子供の頃、老人から、こんな話を聞いたことがあります。
昔から伝わっている物語だそうです。
 神は、はるか昔に、海の彼方に大きな島を作りました。
その島では、温暖な気候により、
植物が豊富に生い茂り、動物は大型の動物が繁殖しました。
 時は満たされたと考えた神は、
まず、勇敢な人達をたくさん島に連れてきました。
勇敢な人達ですから、大型の動物がいても、
さらに、数々の困難に直面しても、
あらゆる困難を克服していきました。
 そこで、神は、次に文明を発達させようと考えました。
科学が得意な人達をたくさん連れてきました。
何もなかった島も、科学が得意な人達によって、
多くの建物や乗り物が作られていきました。
 こうして、人間が住んでいなかった島は、発展していきました。
自然を克服し、生活が便利となり、島には、平和と繁栄が訪れたかにも思えました。
 しかし、島に平和と繁栄が訪れたとたん、
多くの人達は、目標がなくなってしまったので、
予想もしなかった方向へ流れていきました。
勇敢な人達と、科学が得意な人達が、島の支配権をめぐって、争いを始めたのです。
さらに、争いが嫌いな人達は、享楽的な生活へと流れていきました。
 自然を克服し、生活が便利になって、理想社会ができると考えていたところが、
思わぬ結果となりました。
 文明を建設するという目標がなくなった人間が、闘争と享楽に流れるとは、
思いもよらぬことでした。
 そこで、神は警告を発することにしました。
闘争に生きる人達には、雷雲から、大きな雷を落とし、
享楽的に生きる人達には、病を与えました。
 しかし、神の警告は聞かれることなく、
人々は、闘争と享楽のなかで生きました。
 そこで、神は、別の方法を考えました。
別の島から、賢者を連れてきて、人間の生きる道を説かせました。
闘争に生きる人達には、「悔い改めよ、そして互いに愛せよ。」と説き、
享楽的に生きる人達には、「悔い改めよ、そして学びなさい。」と説いたのです。
 しかし、闘争に生きる人達も、享楽的に生きる人達も、
自分たちの利益が失われると危機感を覚えて、
この賢者を毒殺しました。
 神は、この様子を見ていて、大きな大きな、ため息をつきました。
このままでは、生まれてくる子供が、次々と、闘争と享楽に染まってしまう。
神は、最後の手段を決断しました。
神は、大天使に命じました。死と再生の天使に命じました。
 一夜明けた翌朝には、大海の波間に、
かつて、人間が使っていた道具が、漂うだけとなりました。
 久しぶりに、島を訪れようとした漁師は、
波間に漂う亡骸を見て、はかない文明であったと悲しみました。





















































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